C2 · ProficientLesson 2 of 2

なりと文語の断定・伝聞

古典語の二つの助動詞「なり」を、体言・連体形に付く断定と、終止形に付いて耳から得た情報を示す伝聞・推定に分けて学びます。活用、接続、文脈による解釈、現代の標語や文芸で残る断定用法を整理し、直後動作や選択を表す現代語の「なり」とも区別します。古典引用の響きを理解し、場面に応じて読み解けるようになります。

By the flumi team About 3 min read 24 vocabulary wordsGrammar learning path: 文語の比況・断定・伝聞

古典語(こてんご)には、形が同じでも起源(きげん)と働きが異なる二つの助動詞(じょどうし)なりがあります。一つは「である」に近い断定(だんてい)、もう一つは耳から得た情報にもとづく伝聞(でんぶん)・推定です。

このページでは、出典を添えた例(『土佐日記』の引用)と現代の標語以外は、形を示すために作った作例です。作例には(作例)と記します。

二つの「なり」を見渡す

接続と意味を合わせて見れば、基本的な区別ができます。

種類 主な接続 中心的な意味 現代語の目安
断定の「なり」 体言(たいげん)・連体形(れんたいけい) 同一性・性質を断定する ~である
伝聞・推定の「なり」 終止形(しゅうしけい) 聞いた話、音による推定 ~そうだ、~ようだ

助動詞の「なり」とは別に、形が似るだけの紛(まぎ)らわしい同形もあります。

紛らわしい同形 正体 例 現代語の目安
静かなり・あはれなりの「なり」 ナリ活用形容動詞の語尾(語幹+なり、連体形は「なる」) 静かなる夜(作例) ~だ
立派に成りぬ・風と成りての「成り」 四段動詞「成る」の連用形(後ろに助詞・助動詞が続く) 風と成りて(作例) ~なる(変化・成立)

現代語訳だけで「なり」の種類を決めないでください。訳が似る場合でも、前の語の活用形と、情報がどのように得られたかを確認(かくにん)します。

断定の「なり」

断定の「なり」は、名詞や名詞相当の部分を述語として結びます。「にあり」が縮まって成立したとされます。連用形には「なり」のほかに「に」の形もあります。

活用形 形 例の一部
未然形(みぜんけい) なら 真実ならず
連用形 なり・に 真実なりけり/真実なりき/真実にあらず/真実にてあり
終止形 なり これ真実なり
連体形 なる 真実なる言葉
已然形(いぜんけい) なれ 真実なれば
命令形 なれ 誠実なれ

継続は力なり。

「継続」は「力」である、と同一性を強く断定しています。現代でも標語や格言として古風な響きを生かす用法です。

伝聞・音による推定の「なり」

もう一つの「なり」は、他者から聞いた内容や、聞こえる音を手がかりに判断したことを表します。「音あり」に関係する形と説明されます。

用法 表現 出典 解釈
伝聞 男もすなる日記 『土佐日記』(紀貫之)冒頭の引用 男もするという(=するそうだ)日記
音による推定 秋の野に虫の声すなり 作例 虫の声がするようだ

動詞などの終止形に付きます。ただし、ラ変型の語には連体形に付くという古典語の接続規則があります。

ラ変の「あり」の連体形はあるで、伝聞・推定の「なり」が付くとあるなりとなります。打消の形にも注意が必要です。あるなりは撥音便化してあんなりとなり、表記では撥音が現れずあなりとなることがあります。同じように、ざるなり→ざんなり→ざなりという形もあります。これらは断定の「なり」と区別する有力な手掛かりです。

ここでのすは、サ変動詞するの古典語形です。

この推定は、特に耳から得た徴候(ちょうこう)と結び付きます。現代語の「らしい」のような、あらゆる根拠に使える一般的な推定形式として扱わないでください。

活用と接続で判定する

伝聞・推定の「なり」は、未然形と命令形を持たないラ変型の活用をします。

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
なし なり なり なる なれ なし

四段活用などでは終止形と連体形が同じため、表面だけでは断定の「なり」と重なることがあります。その場合は、前が名詞相当か、聞いた情報を述べているか、後ろの名詞をどちらの「なる」が修飾しているかを文脈から判断します。

連体形のなるも、前の語を見て判定します。真実なる言葉(作例)では、体言「真実」に断定の「なり」が付き、見えている「なる」はその連体形で、「真実である言葉」という意味です。音すなるでは、サ変動詞「す」の終止形に伝聞・推定の「なり」が付き、見えている「なる」はその連体形です。静かなるでは、ナリ活用形容動詞「静かなり」の連体形です。

伝聞・推定の助動詞を比べると、なりは耳で直接とらえた音を根拠にし、めりは目に見えるようすを根拠にします。らしは、耳や目で直接とらえた徴候よりも、事情や一般的な根拠から判断するときに用います。

形式 主な根拠 接続 例 おおよその解釈
なり 聞こえる音 終止形(ラ変型は連体形) 人の声すなり(作例) 人の声がするようだ
めり 見えるようす 終止形(ラ変型は連体形) 人来(く)めり(作例) 人が来るように見える
らし 間接的な事情・根拠 終止形(ラ変型は連体形) 春来(く)ぬらし(作例) 春が来たらしい

「めり」「らし」も終止形に付き、ラ変型の語にだけ連体形に付きます。カ変動詞「来」の終止形は**来(く)**なので、人来(く)めりです。「来る」は連体形なので、ここに「めり」は付きません。

まず前の語の品詞と活用形を調べ、次に「である」と訳す断定か、「聞こえる/聞いたところでは」と解する伝聞・推定かを比べます。

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組織の信条を古風な標語として掲げます。「公正こそ組織の礎。」

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現代に残る断定の響き

断定の「なり」は、現代の日常会話で生産的に使う形ではありませんが、標語、宣言、文芸的な語り、歴史的な文体の模倣(もほう)に残ります。

  • 継続は力なり。(現代の標語)
  • これこそ職人の技なれ。(作例)
  • 原因は人の慢心にあり、備えこそ要なれ。(作例)

通常の報告書なら「継続は力です/である」のように書きます。「なり」を使うと、格言的・古風・演出的な文体効果が加わります。伝聞・推定の「なり」は、古典の引用や古語を意識した創作以外ではさらに限定的です。

係り結びで結びの形が変わる

古典語では、係助詞ぞ・なむ・や・かがあると連体形で結び、こそがあると已然形で結びます。断定の「なり」なら、ぞ・なむ・や・か→なる、こそ→なれです。したがって、これこそ職人の技なれの「なれ」は、「こそ」に呼応する已然形です。

断定の「たり」と比べる

体言に付く断定にはたりもあります。なりが「にあり」に由来するのに対し、たりは「とあり」に由来し、漢文調・荘重な文体に多く現れます。

形 例 文体的な印象
なり/なる 継続は力なり。/真実なる言葉 格言・古風な断定
たり/たる 彼は大将軍たり。/王たる者 漢文調・荘重な断定

堂々たり・堂々たる態度の「たり/たる」は、タリ活用形容動詞「堂々たり」の形です。断定の助動詞「たり」の例としては扱いません。

現代語の別形式と分ける

現代語には、同じ音の「なり」を含む別の構文があります。

現代語の形 意味 例
動詞辞書形+なり 直後に次の動作が起こる 席に着くなり、資料を開きました。
名詞+なり+名詞+なり 選択肢を例示する 電話なりメールなりで知らせてください。
名詞+なりに その立場・程度に応じる 初心者なりに工夫しました。

これらを古典語の断定・伝聞の活用として分析しません。歴史的な文章では、接続、活用、情報源、文体を順に確かめて読み分けます。

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Last updated October 11, 2026