おそれがあると懸念
「おそれがある」を、好ましくない事態への改まった懸念として捉え、名詞・肯定節・否定節・過去の可能性への接続を整理します。行政案内や報道で危険を客観化する働き、確率を断定しない性質、個人的な恐怖との違い、「かねない」と警告の強さ・主体性・文体がどう異なるかを自然な例文で丁寧に学びます。
おそれがあるは、好ましくない事態が起こる可能性を、改まった形で示す表現です。個人が感じる恐怖そのものより、状況から判断される危険や懸念(けねん)を伝えるため、行政案内、報道、調査報告などでよく使われます。
このページでは、次のことを身につけます。
- 名詞と動詞節に「おそれがある」を接続する
- 現在・未来の危険と、過去に起きた可能性を表す
- 「かねない」と警告の焦点や文体を比較する
好ましくない可能性を示す
「Aおそれがある」は、Aが確定したとは述べず、起こり得る不利益として注意を向けます。単なる可能性ではなく、回避や対策を考える必要がある事態を選びます。
気象情報: 今夜、河川が氾濫するおそれがあります。
製品の注意: この設定のまま送信すると、個人情報が外部に公開されるおそれがあります。
どちらも結果を断定していません。また、「おそれがある」だけでは蓋然性(がいぜんせい)の高さまで決まりません。可能性が低くても、被害が重大なら注意喚起に使われることがあります。
「売上が伸びる」のような好ましい見込みには、普通は「可能性がある」を使います。結果が話し手にとって不利益になる特別な文脈なら別ですが、「おそれ」は基本的に負の評価を伴います。
名詞・肯定節・否定節への接続
名詞には「の」を挟み、動詞には普通形を続けます。これから起こる事態だけでなく、すでに起きたかもしれない事態もタ形で表せます。
| 受ける要素 | 形 | 例 |
|---|---|---|
| 名詞 | 名詞+のおそれがある | 土砂災害のおそれがある。 |
| 動詞の辞書形 | 辞書形+おそれがある | 運休が長引くおそれがある。 |
| 動詞の否定形 | ナイ形+おそれがある | 救助が間に合わないおそれがある。 |
| 動詞のタ形 | タ形+おそれがある | 情報が外部に漏れたおそれがある。 |
| 名詞・ナ形容詞の述語 | である+おそれがある | 説明が不十分であるおそれがある。 |
公的な案内では「おそれがあります」、報告書では「おそれがある」と、文体に合わせて文末を選びます。「おそれはない」は危険の可能性を否定する形ですが、十分な根拠がなければ断定的すぎる場合があります。
過去形の「漏れたおそれがある」は、危険が過去のものになったという意味ではありません。漏えいがすでに起きた可能性を、現在の時点で評価しています。
制度的な注意喚起に向く場面
この表現は、発信者個人の感情を前面に出さず、組織として検討すべき危険を提示できます。そのため、次のような場面に適しています。
- 災害情報で、予想される被害と避難の必要を伝える
- 製品や情報システムの注意書きで、誤操作の結果を示す
- 調査報告で、資料の不足が結論に与える影響を述べる
- 行政文書で、制度変更による不利益を事前に知らせる
現在の標本数では、地域差を正確に反映できないおそれがあります。そのため、追加調査を実施します。
大雪の影響により、配送に遅れが生じるおそれがあります。最新の状況をご確認ください。
日常会話で使えないわけではありませんが、「明日は遅刻するおそれがある」は身近な予想としては硬く聞こえます。「遅刻するかもしれない」のほうが自然です。
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「かねない」との焦点差
かねないも悪い結果の可能性を示しますが、動作や傾向を見て「そのままでは悪い結果に至り得る」と警告する響きを出しやすい表現です。「おそれがある」は危険を名詞として提示し、制度的・客観的に扱いやすくなります。
| 観点 | おそれがある | かねない |
|---|---|---|
| 接続 | 名詞+の、動詞の普通形 | 動詞のマス形の語幹 |
| 焦点 | 予測される不利益の存在 | 行為や傾向が悪い結果に至る可能性 |
| 文体 | 行政、報道、報告で特に多い | 改まった警告や批判にも使う |
| 例 | 判断を誤るおそれがある。 | 判断を誤りかねない。 |
「かねない」が必ず高い確率を表し、「おそれがある」が必ず低い確率を表すわけではありません。警告の強さは、文脈、結果の重大さ、副詞などによって変わります。
名詞を「かねない」に直接つなぐことはできません。「事故かねない」ではなく、「事故が起こりかねない」または「事故のおそれがある」とします。
根拠と対策を組み合わせる
公的な文章では、危険だけを繰り返すと、不安をあおる表現になり得ます。次の順序で情報を組み立てると、懸念の範囲が明確になります。
- 危険を判断した条件や観測事実を示します。
- 起こり得る具体的な不利益を「おそれがある」で述べます。
- 対象となる地域、期間、人を限定します。
- 回避方法、確認先、今後の対応を続けます。
たとえば、「強い雨が三時間続いています。北部では河川が氾濫するおそれがあります。川に近づかず、市の避難情報を確認してください」とすれば、根拠・危険・行動が結びつきます。
表現を選ぶ確認表
| 伝えたいこと | 選びやすい形 |
|---|---|
| 好悪を問わない一般的な可能性 | かもしれない/可能性がある |
| 好ましくない可能性を制度的に示す | おそれがある |
| 行為や傾向から悪い結果を強く警告する | かねない |
| 個人が感じる怖さを述べる | 怖い/不安だ |
おそれがあるは、悪い結果を断定する形ではなく、検討すべき危険として提示する形です。結果の不利益性、文章の改まり度、根拠と対策の有無を確認して選びましょう。
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おそれがあると懸念の語彙
10 wordsLast updated October 11, 2026